北川貴英さんからのご寄稿2「ガードポジションチャート」について
2月28日、黒帯をいただきました。
パトスタジオの正式オープンが2016年3月1日。
パトスタジオのオープンからきっかり10年という、なんだか運命的なタイミングでの黒帯授与です。
私がオープン間もないパトスタジオを選んだ理由は単に「自転車で行けるから」。
大輔さんと西林さんが日本を代表する柔術家だと知ったのは、のちのことです。
我ながらおそろしく幸運だったと思います。
優れたベーシックカリキュラムがありつつ、オールレベルで最新の技を知ることもできる。
パトのベーシックの素晴らしさについては茶帯になった際に寄稿した記事に書きましたが、いま読み返してみても全く同じ考えです。
ベーシックカリキュラムと並んで、私が柔術を理解するのに大きく役立ったものがもう一つあります。
それは壁に貼ってある「ガードポジション一覧表」です。
横軸に相手との距離、縦軸を相手の高さをとって、各種ガードポジションの有効範囲が楕円で描かれています。これは確か大輔さんがスマホアプリで作ったものだったはずです。

試合を控えたある日、大輔さんに「どんな作戦でいきますか?」と聞かれました。
「クローズドガードに入れたいんですよね」
そう答えた私に大輔さんが見せたのがその図です。
「クローズドガードは比較的近距離型のガードだから、その手前のガードが必要なんすよね」
当時は「いまさら他のガードなんてできないよ」と思うだけでしたが、その時にはじめて、相手との位置関係でガードポジションを整理する考え方を知りました。
例えば遠間の引き込みに自信があるけど、デラヒーバから攻撃をしたいような時。デラヒーバはかなり近距離のガードなので、遠間の引き込みとデラヒーバの間をつなぐガードポジションが必要になります。その場合は図にある通り、デラヒーバより距離が遠いシャローラッソー、スパイダー、片襟片袖といったポジションを経由して、デラヒーバにつなぐことになります。スパイダー使いが、どうしてもハーフガードまで攻め込まれてしまうなら、スパイダーガードとハーフガードの間にある片襟片袖やニーシールドハーフなどを経由して、スパイダーに戻せばいいことがわかります。
この図のとても便利な点は、「攻めるガード」と「繋ぐガード」を分類にとても役立つことです。
「攻めるガード」は文字通り、その形にさえ入れれば高い確率でスイープやサブミッションに繋げられるガード。「繋ぐガード」は「攻めるガード」への中継地点となるガードです。
「繋ぐガード」の役割は攻めるガードに繋ぐことです。だからそこから攻撃できなくてもさほど問題ありません。相手の意識を分散するために、攻めるフリくらいはできた方がいいですが、そこまで強力でなくても大丈夫です。そう割り切って考えてしまうことで、私の場合はやるべきことをかなり絞ることができました。柔術でやることが膨大すぎるように感じるのは、「繋ぐガード」も含めてあらゆるポジションを「攻めるガード」として磨かなければいけないと思うからではないかと思います。
私個人について言えば、本当に試合で使える「攻めるガード」は二つくらいです。状況にあわせて使うガードポジションはもっとたくさんありますが、その大半が「繋ぐガード」なので、最低限の防御ができるだけで、威力はかなり低めです。
図で言えば、自分の「攻めるガード」の周囲にあるのが「繋ぐガード」になります。
デラヒーバ使いが遠間から攻めるならより間合いの遠いスパイダーや片襟片袖が「繋ぐガード」になりますし、ハーフまで攻め込まれてしまったら、ニーシールドハーフなどが「繋ぐガード」になります。相手に密着されたら間合いの近いガードを一つ一つ経由して、デラヒーバに戻すのです。
片襟片袖ガードは、それ単体では攻撃手段が少なく、「攻めるガード」にはなりにくいのですが、あらゆるガードのハブとなるので「繋ぐガード」として、とても重要です。
強い人に関しておそらく言えるのは「攻めるガード」への入り口がたくさんあるということです。試合で起こり得るあらゆる状況を「攻めるガード」に繋ぐことができるのです。強いディープハーフ使いなら、相手との距離や高さに応じて、ディープハーフに繋ぐルートを豊富に持っているのでしょう。
さらに強い人は「攻めるガード」を複数もち、そこに繋ぐガードもまた豊富に持っています。すると同じガードポジションでも、「攻めるガードA」か「攻めるガードB」への分岐点として機能し始めます。
技の迷子になってしまっている生徒に大輔さんとかが「得意パターンを決めるといい」とアドバイスするのも、この「攻めるガード」を持つということでしょう。結局やることが無限にあるのには変わりないのですが、やるべきことの優先順位が整理されるので、限られた練習時間と体力を有効に使うことができるのです。
この図は確か巣鴨の出入り口のドアと、大塚のシャワーの向かい側の掲示板に貼ってあります。
見落としていた人はぜひみてみてください。なんならインストラクターの許可を取って写真を撮って見返してください。広大な柔術の世界で迷子にならずにすむのではないかと思います。
ところで青帯の時、新しく買う帯になにかかっこいい文言を刺繍したいなと思い立ちました。
それでなんとなくパトスタジオのホームページを眺めてたら、こんなことが書いてありました。
PATOはポルトガル語で「鴨」の意味。「PATO STUDIO」はオープンした地、巣鴨にあやかっての名称だとその時に知りました。自分の柔術は紛れもなくパトスタジオ仕込み。それで思いついたのが「鴨柔術」という文言です。なんだかネギくわえて歩いてきそうですが、それで強かったら、なんだかおもしろいな、と思って採用しました。
PATO STUDIO10周年。おめでとうございます。
前回:
北川貴英「ベーシックカリキュラム」について (2022.8.4)
2026年3月のスケジュール
中村大輔「シングルXガード」教則動画発売!
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